トニー滝谷

レキシントンの幽霊を読んでから、最近映画化されたらしいと知って、気になっていたので借りてきました。
原作のファンをかなり意識したつくりながら、右にカメラを移動しながら話の筋を進めていったり、語りの台詞を突然登場人物が客観的に口にしたり、流れるような音楽など、随所にこだわりを感じる作品でした。
主題は「孤独」であり、宮沢の上品な儚さと尾形のはにかみがちな笑顔がつかの間の結婚生活をより美しく印象付け、村上春樹の「喪失感」を巧く表現していて、中篇ながら密度の濃い映画になっていると感じました。
短編の映画化の方がうまくいく例の一つと言っていいのではないでしょうか?