高校と大学受験における倫理という科目と哲学について。

国立志望者のセンター試験では、理系の大学受験でも地歴公民の科目を受けなければならない。
僕のかよっていた高校では3年のときに政経の授業があるせいか、政経を受ける人が多かった。
僕自身も先生から政経で受けることをすすめられたのだけど、倫理で受けたんです。
なぜなら、倫理が一番おもしろくて好きだったから。*1
しかし、一般的に言っても僕の高校と同様、倫理の受験者はあまり多くない。
これは倫理というものの持つおもしろさと一般性が、授業をつうじて学生に伝わっていないからだと思う。
高校の授業では、多くが人物の羅列と用語の暗記にとどまっている。
さらに、意味のわからない単語が次々に出てくる。
ソクラテスの産婆術、プラトンイデア、カントの悟性と感性などなど。
こういった無味乾燥な暗記というよりも、倫理というものは「サシ飲み」に似ていると僕は思う。
これまでの人類の歴史の中でも、ある重要な問題を一生懸命考えてきた有名人のおっちゃんたちの考えが知ることができるのは、
居酒屋でサシで語ってもらっているようでおもしろい。
そこには、今まで疑うことのなかった常識の崩壊や、考えたこともないような新しい見方の発見があって、しばしばはっとさせられる。
つまり今日の本のあとがきにも書いてあるように、哲学というのは問題にしていることに関心のある人にとっては世界や人生の見方を変えるが、興味のない人にとっては物事をややこしくしているのにすぎない。
したがって、高校も今の授業の形式ではなく、いかに昔のおっちゃんたちが考えた問題が一般的で現代の僕たちにも興味深いものであるか、あるいは通じるものがあるか、ということを強調すべきだ、と僕は思う。
そういう意味で、今日久しぶりに本棚から出してきて読んだ↓はとてもおもしろかった。

子どものための哲学対話

子どものための哲学対話

子どもと猫との対話で成り立っている本文は、子どもにとって身近なことがらが猫の哲学的な解釈を考えるきっかけとして展開していく。
たとえば、なぜ勉強しなくちゃいけないか、ネアカとネクラの違い、クジラは魚か、地球は丸いかといった話題がある。
とりわけ今日読んだときは、

人間は自分のことをわかってくれる人なんかいなくても生きていけるってことこそが、人間が学ぶべき、なにより大切なことなんだ。

という言葉が印象に残った。
当たり前のことだけど、哲学者の言うことすべてを鵜呑みにして信じることはないし、正しいわけでもないと思う。
大事なのは、それで物事を見る自分の視点が開けるってことだ。
↑に比べればやや授業的な感もあるけど、

ソフィーの世界 哲学者からの不思議な手紙

ソフィーの世界 哲学者からの不思議な手紙

もベストセラーだけあっておもしろい。西洋の哲学者の歴史についてひととおり学べます。
次に読もうかと狙ってるマンガは哲学する (講談社プラスアルファ文庫)にも載ってるらしいんだけど、
寄生獣(完全版)(1) (KCデラックス)

寄生獣(完全版)(1) (KCデラックス)

も哲学的です。これを読んだとき、漫画と小説はもはや表現形式の違いだけであって、伝達しうる内容の質は変わらないんじゃないか、ということも感じた。
さらにテレビ番組では、お厚いのがお好きという深夜番組が、哲学の名著をわかりやすく解説している点でとても楽しめるものだった。現在は活字化されてるらしい*2



日曜なんで、もう1冊読みました。

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

スコットランドの小さな島とアイルランドウイスキーを飲むという明確な目的を携えて旅をする紀行。
美しい写真と、静謐で秀逸な文章。
僕はお子様なのでまだウイスキーがあまり好きではないけれど、いつかウイスキーの味をアーネスト・ヘミングウェイの文章やセロニアス・モンクの音楽に例えるような日が来るんだろうか?(笑)
とりあえず、旅行に出かけてウイスキーを飲んでみたくなる本。

*1:実は点数が取りやすい、という打算もありましたが(笑)

*2:まだ読んでないけど、お厚いのがお好き?なおかつ、お厚いのがお好き?