フィードバックループの長さ

SMBEに行っていた人たちが帰ってきました。来年はフランス・リヨンだそうです。再来年は日本。
一方で進化学会の締切が迫っていますが、今年は遠いし、9月は次の週にも学会があるので不参加ということで。

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

下巻ではまず、過去の社会における成功の例として、ニューギニア高地・ティコピア島・日本が取り上げられている。次に、現代において崩壊した/しつつある社会の例としてルワンダ・ドミニカとハイチ・中国・オーストラリアが挙げられ、最後は著者の提言。
基本は過去の社会との比較なので、共通する要因、とくに環境の記述は手厚い。現代社会に特異的な要因は取り扱う範囲外ということだろう。それにしても、最後の提言は環境についてのみだったので、ややバランスを欠く。
おもしろかったのは、島(あるいは社会規模)の中でも、サイズが小さいものと大きいものが存続しやすく、中程度のものがもっとも崩壊しやすいという指摘。これは、小さい社会では環境保全のためのボトムアップ的な取り組みが、大きな社会ではトップダウン的な取り組みが取られやすく、共有地の悲劇がもっとも顕在化しやすいのが中程度の社会であるためという。最後の提言でも大企業と環境について一章を割いているが、要するに自分が行った行為が環境破壊という形で返ってくるまでのフィードバックループの長さが長い程、崩壊が起きやすくなるということなのだろう。
また、崩壊は徐々に起こるのでなく、もっとも繁栄している状態から急激に起こりやすいという点も興味深く、教訓的だった。
労作。ただ、より多くの人に読んでもらうには、抄訳版も作った方がいいんじゃないでしょうか。