若い。

麦の道 (集英社文庫)

麦の道 (集英社文庫)

自宅に置いてあったこんなん読んでみました。
椎名誠の自伝的小説。県下随一の新設落ちこぼれ高校に入学して、「どうでもいいや」と考えている俊介が、柔道部に入り、近くの高校に通う好きな子ができ、番町グループと喧嘩をして、という風にして一年間かけ、高校生活になじんでいくさまを描いたもの。
この小説の一番の特徴はリアリスティックなところじゃないだろうか?つまり、事件が起こりそうでなにも起こらないことだ。
柔道部の県大会での雪辱をはらす試合も、近くの高校との因縁の大決戦も、番町グループとの雌雄を決する戦いも、佐野さんへのアプローチも、最後まで起こりそうで起こらない。
そこらへんが中途半端ながら、いかにもありそうなことだ。
あと、喧嘩の描写がなまなましくていい。確かに喧嘩の場数を踏んできた人が書く文章は、こういう風になるんだろう。
時代は違うけど、自分の高校時代が懐かしくなる本でした。
と思っていたら今晩は思いもかけず、酔いつぶれてしまった先輩のお世話で自分の高校のそばまで行ってきました。
懐かしがってるひまもなく終電はなくなってしまったんだけど、たまたま出会った後輩に自転車を借りて、思ったより早く帰ることができました。
ありがとう!
椎名誠のフィクションは大体感覚に訴えかけてきて、いわゆる気持ち悪いものが多いけど僕は好きです。
たとえば、
アド・バード (集英社文庫)

アド・バード (集英社文庫)

や、
中国の鳥人 (新潮文庫)

中国の鳥人 (新潮文庫)

など。
紀行は、探検隊で行くものより一人で行く、
草の海―モンゴル奥地への旅

草の海―モンゴル奥地への旅

や、
パタゴニア あるいは風とタンポポの物語り (集英社文庫)

パタゴニア あるいは風とタンポポの物語り (集英社文庫)

などの方が好きです。両方ともやたらだだっ広くてなにもないところに行くのがいい。
あこがれますね。
さらば国分寺書店のオババ (新潮文庫)

さらば国分寺書店のオババ (新潮文庫)

は原点のような作品です。椎名誠を一冊でおおまかにつかみたいなら、ぜひ。