母さん、僕のあの論文どうしたでせうね

ということで、寝かせ続けてきたHC論文を再解析中。
去年に仕事しなかった報いを受けております。


ナズナの一種であるCapsellaの自殖の進化を調べた2本のPNASの論文。Wrightのグループの論文は、核DNAの塩基配列を読んで過去の人口動態を推定し、種分化の時期とボトルネックがあったことを推定している。Schierupのグループの論文はS-locusも調べることで、自殖の進化を考察している。
一般に自殖は周囲に同種個体や送粉者がいない場合に繁殖を保証する戦略として好まれる。
ルベラナズナCapsella rubella)は自殖する種で、ギリシャあたりに生育するオオバナナズナC. grandiflora)から派生したが、最終氷期の終了・農業の拡大の時期に地中海周辺に広まった。で、分化した時に自家不和合性を失い自殖を獲得したが、その際にボトルネックがあり遺伝的多様性の大部分を失った、といったストーリーでした。シロイヌナズナArabidopsis thaliana)よりも最近に分化したことから、遺伝的多様性が失われた後の表現型の進化(花弁を失う)などといった現象を調べるには適しているのかもしれません。


もう一つは、American Naturalistの論文
捕食者が群集に現れるタイミングによって群集組成が異なってくる、という話。バクテリアと原生生物を用いたマイクロコズムの実験で、5種の被食者と2種の捕食者の群集構成を考える。ただし、5種の被食者は遷移を模した順番と間隔で導入される。捕食者の導入のタイミングが早いと、捕食者は遷移初期の種であるテトラヒメナを食べて増加し、繊毛虫Colpidium)を絶滅させてその後の長期的な群集動態を変化させる。しかし、導入が遅いとテトラヒメナは既に競争によって低い密度に抑えられているため、捕食者があまり増えられず繊毛虫は存続する、といった実験。