ストイキ復習

今回のレクチャーで出た課題の分。
Elser et al. (2006) Early Cambrian food webs on a trophic knife-edge? A hypothesis and preliminary data from a modern stromatolite-based ecosystem. Ecol Lett
「カンブリア期の爆発的な進化の背景には、生態系中のリンが豊富になり、大型の動物を維持できるほどC:P比が低くなった環境変化がある」という仮説にもとづき、メキシコの湖にいるストロマトライトと貝の系にリンを加えてみた。その結果、中程度のリンで貝の成長速度が最大になるが、あまりに高濃度のリンのもとでは成長速度が下がり、死亡速度が上がることがわかった。生態系中のリン濃度が動物の進化に影響しているのかもしれない。


Elser et al. (2007) Biological stoichiometry in human cancer. PLoS One
成長率仮説:Growth Rate Hypothesis(GRH)によれば、成長率が高い生物ではリボソームRNAを生産する必要があるため、リン要求量が大きいという特徴がある。ガンの組織でも同じことが言えるのではないかと考え、肝臓・腎臓・結腸・肺の腫瘍と正常組織のリン・窒素・RNA・DNAの量を調べた。結果として、肺と結腸ではRNAとリンの量が増えていたが、肝臓・腎臓ではそうでなかった。これは、表皮の腫瘍にはr選択が、それ以外の部分の腫瘍にはK選択が働いているためではないだろうか。


Elser et al. (2006) Signatures of ecological resource availability in the animal and plant proteomes. Mol Biol Evol
植物は動物に比べて窒素を得ることが難しいので、タンパク質を構成するアミノ酸の側鎖に含まれる窒素の量は植物の方が少ないだろう、という予測から、植物と動物各9種のゲノムデータを調べた。確かに植物では窒素の量が少なく、特に発現量が多い遺伝子ほどタンパク質中の窒素が少ないという傾向が見られた。動物で窒素含量と発現量との相関が見られなかったのは、選択圧が弱まった結果だろう。


Acquisti et al. (2009) Ecological nitrogen limitation shapes the DNA composition of plant genomes. Mol Biol Evol
植物の窒素制限はタンパク質だけでなく、核酸にも及んでいる可能性がある。シロイヌナズナとヒト・ショウジョウバエを比較してみると、ナズナの方が一塩基あたりの窒素分子数が少なかった。更にイネなどの栽培化された植物と比較してみると、栽培植物の方が窒素が多かった。アミノ酸側鎖でも、栽培植物と窒素固定する微生物と共生する植物で窒素を含む量が多かった。おそらく、栽培植物では肥料を与えられ続けて選択が緩んだのだろう。


Klausmeier et al. (2004) Optimal nitrogen-to-phosphorus stoichiometry of phytoplankton. Nature
海洋の植物プランクトンでは、N:P比が平均16程度でばらつく。この理由を調べるため、指数増殖する場合、競争的平衡の場合で数理モデルを作成すると、指数増殖する場合にはリボソームRNAを作るためにN:P比が低くなり、競争的平衡の場合には栄養を取り込む器官(タンパク質・葉緑体)を作るためにN:P比が高くなることが示された。16という比率は生化学的な最適値ではなく、種特異的なN:P比の平均なのだろう。


だんだん天気が悪くなって、寒くなってきました。でも、雨が降ったおかげで虹の根っこが見られたり。